序章
取扱説明書の作成に長年関わる当社は、お客様からの要求に応えるだけでなく、取扱説明書の作成そのものを柔軟に変化させながら成長して参りました。作成方法や手順、納品物の変化など、喜ばれたこともあれば、課題が浮き彫りになり、失敗も経験しました。
近年では、人手不足や急激なオンライン化が影響したのか、取扱説明書の作成の「価値観への変化」も感じることがあります。
これまで得られた経験やそこから得られた考えを紹介することで、当社のこだわりや取組みをお伝えし、今後の「取扱説明書を作成するためのヒント」となれば幸いです。
なぜ取扱説明書を作成すると課題が見えてくるのか
製品マニュアルの場合、「取扱説明書の作成」について検討されるケースをあげてみます。
- 新製品を正しく安全に使って頂くために、推奨環境や操作方法を伝えなければならない
- 製品が大型化したため、設置方法やメンテナンス方法を記載しなければならない
- 海外への販路拡大のため、英語や中国語の取扱説明書を製品と同梱して作成したい
- ヨーロッパだけでなく、中国で必要な国際規格を用いた記載が必要となった
- デザインが古いので一新したい
- 製品と同梱する納品媒体が紙からCD/DVDに変わった
- 人手や経費削減のため、Word以外の良い作成ツールはないか
製品や業界が違っても取扱説明書の作成には、上記のような場面を “共通”にお持ちだと思います。いざ取扱説明書が必要となったとき、販路を拡大したいとき、PL法って?国際規格って?翻訳はどこに依頼すればよい?など、「取扱説明書の作成」といっても必要な知識や工程が多いことに気づかれるはずです。
不足している知識や人手など、自社の課題を洗い出し、整理していくことをおすすめします。
1:取扱説明書の良し悪しは誰が決めるのか
- 誰のための取扱説明書なのか?
- 誰が利用するのか(職種やスキル)・・・エンドユーザなのか、サービスマンなのか
- いつ利用するのか・・・設置や操作する時なのか、定期点検やメンテナンスの時なのか
- どこで利用するのか・・・国や言語、机上or現場、装置の下or工場内など
- どのように利用するのか・・・紙をめくるのか、タブレットで見たいのか
- 誰が作成する取扱説明書なのか?
- いつ作成するのか(時期や期間)・・・新製品発売の春と秋の年2回。作成期間1ヶ月。
- 誰が作成するのか・・・社員なのか、専門の業者なのか、人数は足りているか
- どこで作成するのか・・・作成のための材料や情報は足りているか、製造・翻訳は海外なのか
- どのように作成するのか・・・組版ソフトを利用するのか、承認フローは必要か
- 何で作成するのか・・・国際規格に基づいた記述になっているかなど
利用する側に評価されるだけではなく、
作成する側にとっても良い「取扱説明書」であることが望ましいと考えています。
新たに取扱説明書を作成する際、もう一度、双方の視点から見返されてはいかがでしょうか。
2:取扱説明書の作成のツールや機能
よくご相談頂くのが、「どのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使ったらよいですか?」「どのエディタを使えば良いですか?」といった問い合わせです。
私がこれまでの経験から思うのは、シンプルが一番!です。
考え方として、OUT→INから順番に整理し、作成にあったツールを絞り込みます。
- アウトプットはどのような形式ですか?
(納品形態、媒体:PC・スマホ・組込、時期、回数、量、デザイン、国、言語、など)
- インプットはどのようなものが必要ですか?
(マークアップ言語 or WYSIWYG、写真・イラスト、定型文、法規、用語統一、流用度、など)
- 業務の流れを整理し理解したうえで、イリーガルな作業、突発案件などないですか?
(製品名未定のまま、作成開始する。設計変更が入るので、納品前に割込み修正する。など)
- 処理に適したツールや機能は?
(Word、FrameMaker、inDesign、組版システム or CMS など)
必要最低限の機能があるツールを選び、その後プラグインや他のツールと組み合わせて使うところからスタートし、必要に応じてアップデートしていくことをオススメします。
いろいろな機能があっても、機能を使いこなすのは、執筆がメインとなる業務の中で、とてもハードルが高いのではないでしょうか?
3つめの割込み作業は、適したツールを検討するうえで重要になります。作成作業をイメージし、アウトプットへの反映も先立って進めなければならない場合もあります。上記1~4の質問を繰り返すことで、課題を最小限に抑えた“取扱説明書の作成”に必要なツールを選定できるのではないかと考えます。
3:変わってきた取扱説明書
長年当社が取り組んできた製品の取扱説明書は、印刷、製本された紙が主流でした。
それが作成方法はそのままで、紙からPDFでの納品に変わり、印刷コストと期間が抑えられました。
更にPCの普及で、リンク機能や検索機能を重要視し、Webブラウザで閲覧出来るHTMLでも作成&閲覧されてきました。これにより、当社もワンソース・マルチユース(1つのテキストから、HTMLとPDFを生成する)が可能になるSGMLやXMLなどのマークアップ言語を扱うようになりました。ページの概念がなることで、自動組版が進み、DTPも下火になってきたように思います。
その後、DITAなどのマークアップ言語やCMSなど、いかに効率的に取扱説明書を作成するかといった方向に舵が切られたように思います。
そして今、PCだけではなくスマホやタブレットでの閲覧や操作、Wi-Fiの普及などによりオンラインでの配信提供、取扱説明書を取り巻く環境も加速度的に変わってきているように思います。
AIの出現により、人手不足を補う且つ正確でスピーディな要素として、翻訳の分野から利用が進んでいます。通信環境下、データの送受を行いながら取扱説明書の内容を表示するなど、常に新しい進化もあります。
これまでの取扱説明書の作成でよいのか?
当社も過渡期の中で、“取扱説明書の作成“をめぐり、課題の洗い出しをしています。
まとめ:変化する取扱説明書の作成、伴走型で取り組みます
前述の通り、取扱説明書の過渡期に課題解決せずして「作成する」のはもったいない!です。
- 理由や目的を見失い、ツール導入に過剰な機能を付与している
- 見た目にインパクトがある取扱説明書だが、アップデートに手間がかる
- 高機能な制作システムを導入したが、人手が足りない、サポートも受けられない
- 日本語の表現を丁寧な日本語で作成しているが、翻訳が難しい書き方になっている
当社は、伴走型の対応で、取扱説明書の悩みや問題に寄り添いながら対応します。
アドバイスでよいのか、セミナーを受講して頂くのがよいのか、ライターを派遣し、内製のお手伝いをしたらよいのかなど、みなさまからの困りごとを一緒に解決していきたいと考えています。
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