■取扱説明書における英語とは?
皆さま、こんにちは。
いきなりですが、取扱説明書を英語で作る目的は何でしょうか。
そうです。英語圏のユーザーに読んで、使ってもらうためですね。英語圏というと、、、英語を第一言語、または公用語とする国です。
イギリスや北アメリカが真っ先に思い浮かびますが、そのほかにもオーストラリア、フィリピンやシンガポールのアジアの一部、南アフリカを中心とした各国のことです。それら地域はなんと50ヶ国にものぼり、約6億人もの人たちが日々英語を使って暮らし、仕事をしています。
2020年における地球の全人口は77.5億人ですから、なんと人類の77.4%にも及びます。
とすると、、、お気づきですね。
これだけ広く様々な状況で使われている英語。日本語で作られた取扱説明書を英語に翻訳すればコトは足りるのでしょうか。
ユニバーサルに正しく伝わる取扱説明書としての英語版取説でなくてはなりませんね。また、多くの場合は文書構造が近いヨーロッパ言語への翻訳(多言語翻訳)は英文をハブとして行われます。そのため、英文が間違っているとそれら派生の翻訳成果物まで間違ってしまいます。
ライターがテキストエディタを活用して短納期やCMS化に対応している現代において、多言語成果物の元となる英文取説の正確さは何をおいても重要だ、と言わざるを得ません。
「それ」を作るために必要なことは何でしょうか?一緒にヒモ解いてみましょう!
■英語版の取扱説明書に求められることは?
さて。
「正しく伝わる英語版の取扱説明書を作るために必要なこと」って、そもそも何でしょうか。
正しい英語が使われていること? もちろんそうですね!
世界中の言語のスタンダードたる英語とはいえ、間違っていては伝わりません。とはいえ、必要なことはそれだけではありませんね。
先に「広く様々な状況で使われている英語」と書きました。50ヶ国、約6億人の人たちに正しく伝わるためには、多くの人に誤解されない文章で執筆されているべきです。
お手本としては、アメリカ国防総省制定MIL規格の一部に定められた記述方法があります。MIL規格とは、アメリカ軍が必要とする数多くの物資を調達するための規格を総称したものです。その中には装置や道具の使用方法について定められた内容も含まれています。
詳細に興味をお持ちの方はお調べいただければと思いますが、それこそが「誤解なく装置や道具を使うためにどんな説明が必要か」=「広く様々な状況で使われている英語」を知るカギと言えるのではないでしょうか。
日本国内でも海外からの就労者を受け入れることが当たり前になっていますが、当初は日常生活から仕事まで「わかってくれない」ことを「わかってもらう」ためにどうするかに随分と苦労があったと聞きます。
しかしそんなことは多民族国家のアメリカでは当たり前のこと。
誤解を与えないように「一文一義」で執筆し、文章で伝わらないことは絵を添える。
これが「正しく伝える」ことの基礎であり、お手本だと言えます。
■取扱説明書の英語化での失敗と原因は?
ご存知のように、我々日本人は長らく英語教育を受けているにもかかわらず、英語に苦手意識を持っている人の割合が多いことは誰もが認めるところです。
「受験のための勉強では使える英語が身に付かない」なんて言うのは英語教材販売の常套句ですが、それにももちろん理由が有ります。
この記事を読んでおられる皆さまも異論はないでしょうが、それはズバリ「日本語と英語の文書構造の違い」。それが理由です。
バイリンガルやトリリンガルの人にコツを尋ねると「英語がわかっていればあとは、、、」なんて聞きますね。 その英語すら不自由な私には眉唾のように思えますが、どうやら文書の習得や翻訳にとって文書構造の違いが切っても切れない関係であることは間違いないようです。
だとすると、和文⇒英文への1つの難関は「英語と日本語の特性の違いに配慮せず、日本語を訳すだけの英語化によって、英単語に置換しただけの取説を作ってしてしまうこと。」ではないでしょうか。
英単語が並んでいたって、理解してもらえないのでは意味がないですね。
■取扱説明書の英語化成功のコツとまとめ
取扱説明書を作る仕事をしていると、翻訳者さんや翻訳会社の人とお話しする機会があります。
そこでの彼らの仕事は「正しく翻訳すること」に尽きると言います。
依頼するコチラとしてはいい感じに意訳していただきたいものですが、、、ルール化、数値化できないことをくみ取り、間違いなく反映することなど現実的ではありません。
では解決策はないのかといいますと、そんなことはありません。
日本語を執筆する段階で英語特有の文章構造を理解しておき、「曖昧さ」と「過不足のない」原文を作ることです。 言い換えると「英語に直訳できる日本語で執筆すること」ではないでしょうか。
それってどんなことなのかイメージしていただくために、少しかみ砕いてみましょう。
主語+述語の後に説明が付加されるのが英語の文章構造の基本ですね。あくまで「考え方として」ですけれども、日本語の特徴である主語を省いたり先に説明をしたりというスタイルとは決別し、英語的な構造で原文たる和文取説を執筆することが、英文と和文の間での齟齬を排除する近道です。
「英語ネイティブでもないのに、英文の構造で考えるなんて」
そうですね。そんなことができれば最初っから英文で執筆してますよね。
いささか手間を要しはしますが、どんな風に和文を書けばよいか知る手立てはあります。それはズバリ、元が英文で和訳された取扱説明書を読んでみることです。
海外メーカーの日本向け取扱説明書であれば、原文は英文で執筆されたものを日本語に訳しています。
英文ですべてを読み解くのはなかなか骨がおれる作業と思いますから、Web翻訳ツールを活用してみてはどうでしょう。日本語としては流暢ではなく多少の違和感を感じるでしょうが、5W1Hの要素は掴んでいただき易いかと思います。
それこそが、そのままひっくり返して英訳すれば英語圏の人たちに理解していただける文章なのです。
さて、まずは英訳したときに誤解を生じにくい和文原稿を執筆するにはどうするかというイメージを持っていただけたかと思います。
実際には、取扱説明書を使用する国や地域(仕向け、とも呼ばれます)によって機械や装置の仕様が異なっているでしょうから、それらを盛り込まねばなりません。
さらに、使用する国や地域ごとに定められた工業規格や調達可能な交換部品、油脂類の書き分けや反映、廃棄のルールへの準拠などもありますから、英文の取説にも実際の成果物にはいくつかのバリエーションが要求されることでしょう。
自動車の英文マニュアルを例にとれば、北米向け、ヨーロッパ向け、オーストラリア向け、イギリス向けに加えて、いくらか広範囲な左ハンドル一般(アジアやアフリカなど)というバリエーションもあるそうです。
そうしたバリエーションへの対処の詳細は、別記事の国際規格への対応や仕様書き分けを参照いただければと思いますが、少なくとも取扱説明書の根幹をなす操作やメンテナンス作業の手順を正しく執筆することはクリアできると思います。
こうして、翻訳に適した和文原稿を執筆することこそが正しい英語と多言語の取説を生み出すカギとなり、それこそが英語の役割と言えると思います。
あるメーカー様では、日本人ライターと英語ネイティブのライターが協力して、最初から英文の取扱説明書を執筆するのだそうです。 そして、日本語はそれを元に翻訳します。
彼らにとっては「日本語が元」なのではなく「日本語もバリエーションの1つ」なのですね。
どうでしょうか。 取扱説明書にとって英語とは?その役割の重要性と執筆のコツを掴んでいただけたなら幸いです。
ダイテックでは製造業のマニュアル作成改善を検討する際に、考慮すべきポイントをまとめた入門資料「安心と安全をカバーするマニュアルづくり 3つのポイント」「なぜ読むマニュアルから『見る3Dマニュアル』が増えているのか?わかるガイド」をご用意しました。本資料は、マニュアル作成改善をしたい方には必見の資料です。ぜひダウンロードいただき、ご覧ください。