取扱説明書と誤記

■そもそも取扱説明書における誤記とは?

皆さま、こんにちは。

いきなりですが、取扱説明書の「誤記」ってそもそも何でしょうか。

そうです。「間違い」ですよね。

そんなことわかってますよね。

言いたいことは「間違いにもイロイロある」ってことです。

では、どんな間違いがあるのかを想像していただけるでしょうか。

一番イメージしやすいのは文章中の「誤字・脱字」ですね。

送り仮名の間違い、漢字の変換違い、用語間違い。

用語間違いなどは執筆者の誤解(あるいは気取ってワザと)に起因してるものもあります。

数字の間違いなどは読むだけでは正誤を判断しにくいものです。

7、9、4、の取り違えはよくあるのですが、原稿や仕様書に立ち戻らないとその正誤はわかりません。

また数字の間違いには本文と解説イラストの両方にまたがった記述があることも多いので「本文中の間違いは推敲中に見つけて直せたけども、イラスト内の数値はそのまま」また逆の場合も“アルアル”と言えます。

■誤記に起因する悪影響

当たり前ですが、取扱説明書はわからない手順を調べたり、調整に用いる数値を知るために使います。

よりどころとなる情報が間違っていては、使用者は間違った操作をしてしまいます。

教えられたとおりに操作したのに正しい結果が得られないとしたら、、、

言われなきゃわからないかもしれない小さな間違いから、命に関わる重大な事故まで「ウッカリ」の結果はまさに様々です。

不幸にも誤記を発生させた場合には、使用者への補償を除いても様々な途方もない対応が予想されます。

最近のPDFデータ配信であれば修正対応にさほどのコストやタイムラグはかかりませんが、冊子/図書で多数の提供がある場合にはシール修正、挿し込み紙面の発送、そうしたコスト負担の協議など、

この記事ではそんな「誤記」を整理して「どうやれば誤記を防ぐことができるか」を一緒に考えてみましょう。

■誤記の種類と対応方法

冒頭では「誤記にもイロイロありますよ」と提起しました。

「イロイロある」ってことは整理分類もできそうですね。

まずはどんな誤記があるのか、ざっと挙げてみましょう。

1、用語の間違い

2、用語の揺れ

3、技術情報の反映モレ

4、流用元情報の間違いの引きずり

5、情報過多

6、情報不足

この他にも誤記の「類別」はあると思いますが、代表的なものを挙げることはできました。

いかがでしょう。

となると、それら誤記がなぜ起きるのかにもそれぞれに原因がありそうです。

原因の予測がつけば、防止策の予測もまたできるというもの、、、

まずは上に挙げた誤記の原因にはどんなものがあるのか、一緒にヒモ解いてみましょう!

1、用語の間違い:執筆者の誤解やミス

2、用語記載の揺れ:呼び方が違っても「意味」としては間違ってないでしょうが同じ事象や部品に複数の呼び方があったり、音引き(長音)の有無のバラツキは誤解を誘います

3、技術情報の反映モレ:記載/転載のミス、あるいは設計変更に起因するもの

4、流用元情報の間違いの引きずり:流用部分のチェックは甘くなりがち

5、情報過多:使用者の安全のために「しない、させない」記載内容を検討したはずが、交換を推奨している部品の分解手順が載っているなど

6、情報不足:間違いを記しているわけではなくとも「正しく記載してない」のであれば、それも広くとらえれば誤記でしょう

それぞれの類別について簡単に発生の原因を加えてみました。

取扱説明書を作っておられる、または作った経験をお持ちの人ならおおよそは同意いただけることと思います。

1、や2、は用語集の整備を整備すれば一定の効果を発揮するでしょう。

「決まりを明確にして守る」。これに尽きます。

一方、3、以降については事情はいささか複雑です。

しかし、ここでくじけるもんですか。続けて考えてみましょうね。

3、「技術情報の反映モレ」には「手許の原稿や図面、仕様書からの転載漏れ」が解りやすい原因ですが、コトはそんなに簡単ではありませんね。

上の項目に「設計変更に起因するもの」と書きましたけども、家電や自動車などの取扱説明書を作っている人にはまさに”アルアル”ですよね。商品の発売に間に合わせるため制作期間の短縮を求められているにもかかわらず、時には校了後に届く変更通知、、、時間のない中での情報織込み作業、、、関連した記載部位の確認作業も必要です。

この場合は修正を要する部位のピックアップをしてから修正をし、さらに「他人の目」を借りてチェックができれば不安は減るかと思います。「ダブルチェック」と呼ばれる手法ですね。

とにかく、急ぐあまりに適用部位のピックアップを省くと思わぬ見落としが起こるもの。

「急がば回れ」とはこのことでしょう。

4、「流用元情報の間違いの引きずり」は現代的な誤記の代表かもしれませんね。

CMS管理をしてシステム的に「処理」をしていれば尚更です。 バリエーション展開がある装置や商品では差分管理とうまくかみ合わないことがあります。そして流用元とする初期に作成済みの資料で見逃したミスが、派生流用した資料の多くに拡散してしまう、、、というもの。 

これもまた3、と同様にダブルチェックの機会=時間を作り、ミスを潰すしかないと言えます。 

可能な限りデータの流用展開の初期にこの手間をかけることが拡散を防ぐには効果的です。

5、「情報過多」

分かりやすいところでは資料冒頭の安全記載が画一的に流用され、製品に関係ない項目があるケース。

Webでの資料提供が広まるにつれ「情報量=印刷費」という概念が変わったためか目につくようになりました。

安全情報ならば無関係な項目があってもトラブルに直結するものではないですが、、、よろしくないのはユーザーに危険を伴う作業を強いないためにメンテや分解をさせない部位の分解手順を載せてしまうというもの。

開発や設計の部署に記載内容のチェックを依頼する際には漫然と手順を見てもらうのではなく、日常点検やオーバーホール手順を照らし合わせてポイントを押さえた質問をしましょう。

6、「情報不足」これまた不足といっても様々な不足があります。

手順の一部が取材漏れで残ってしまうもの、、、同様に数値情報の遅延、、、しかし決定的なのは目次構成ごとの見落としがあって、公開後に使用者がトラブルに見舞われて取説を使うまで発見できないということがあります。

ソフトやシステムの手順書などは全体の設計を把握することが難しいため、装置や家電品よりもこのタイプのトラブルを耳にするように思いますが、いかがでしょうか。

メンテナンスや調整の「項目」について、装置の部位やアッセンブリーごとに潰しつつ目次構成に反映せねばなりません。類似機種の資料を流用する際の落とし穴とも言えるでしょう。

なんだか、一口に誤記と対策と言ってもそれぞれに特徴があると思いませんか?

■取扱説明書の誤記撲滅のコツとまとめ

では、これまで挙げた誤記の類別ごとに対策をまとめてみましょう。

1、用語の間違い:用語集を整備して守る

2、用語の揺れ:用語集を整備して守る

3、技術情報の反映モレ:適用範囲をピックアップして抜けを防ぐ

4、流用元情報の間違いの引きずり:データの流用展開の初期に推敲を重ねる

5、情報過多:手順や情報の適用条件を整理し、ツリー構造で文章を構成する

6、情報不足:対象製品の部品校構成になぞらえた目次構成とすること

どうでしょうか。 取扱説明書で発生する誤記とは?その傾向と対策のコツを掴んでいただけたでしょうか。この記事が皆さまの取説作成の助けになれば幸いです。

ダイテックでは製造業のマニュアル作成改善を検討する際に、考慮すべきポイントをまとめた入門資料「安心と安全をカバーするマニュアルづくり 3つのポイント」「なぜ読むマニュアルから『見る3Dマニュアル』が増えているのか?わかるガイド」をご用意しました。本資料は、マニュアル作成改善をしたい方には必見の資料です。ぜひダウンロードいただき、ご覧ください。