序章
3Dデータを全社活用したいけど、何から・どこから使おうか?それならまず迷うことなく「組立手順書」からお使いください。なぜか?それは効果に即効性があるからです。
手順書作成工数削減や組立作業員の理解度アップなど、3Dデータの活用効果がすぐに目に見えて出てきます。それは上層部への説得材料になると同時に、他部署に3D活用を横展開するにも役立ちます。
本記事では、3Dデータを使った組立手順書(組立マニュアル)の疑問点や作り方を解説していきます。
3Dデータを後工程で使うなら組立手順書(組立マニュアル)
3Dデータを設計開発より後工程で利用する場合、一番利用価値があるものは組立手順書(組立マニュアル)です。
そもそも組立手順書(組立マニュアル)とは何か?
装置を組み立てる順番や単位、組み立てる際の注意事項、カンコツを分かりやすく「見える化(主に紙)」したものです。
「なーんだ簡単だ!」を思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが中々難しく、匠たちの技術(カンコツ)をどうやって「見える化」し、他の作業員がその技を身に着け、なおかつ製造品質も保持していくか?日本の製造業の永遠の課題である「技術伝承」にも直結する話で、このような課題に対して3Dが大活躍してくれます。
3Dが大活躍する理由は、何といっても理屈抜きで「分かりやすい」ことです。「当たり前じゃん」とは言わないでください。この「当たり前」が3DCAD導入前は、当たり前ではなかったのです。
少々、脱線しますが、私のライターとしての経験を書きます。
20年前の製造業の世界は、「2次元の図面が読めて当たり前」「2次元が読めなきゃ一人前じゃない」と言われており、文系出身の私も、配管や電気、機械の記号を覚えながら2次元図面と格闘した記憶があります。
この2次元図面は、図面を描いた設計者の意図を(その図面情報を利用して自部門の業務を進める)製造部や資材部が完璧に理解することが重要でした。
ですから、製造業で働く場合、まずは図面が読めることが必須で、「手先が器用でバイクいじりが趣味だけど、図面が読めないから、製造業で働けない」なんて人もおりました。
また空間を把握する能力も必要で、2次元の組図を見ながら頭の中で空想(組み立てる)できる事も重要です。さらに1枚の図面の中には、組立に必要な全ての情報が網羅されておりますので、非常に便利ですが、ただよく見ないとその情報をゲットできないので、注意深く読み解く必要があります。(設計者に数値の確認にいくと「図面見ろ!」と一喝されることが良くありました。)
私も数年を経て、組図や配管図、回路図、ブロック図、ラダー図など読めるようになりましたが、それでも初めて見る図面を読み解くには、それなりの時間が必要だったのです。
このように、組立のカンコツを把握する前に、図面を読み解く知識と経験が大前提でした。
しかしこの先人たちの苦労も3DCADの登場で一変しました。
知識がなくても3DCADデータを見れば、装置が理解できるようになったのです。
これには大変驚きました。まるで装置全部が手の平にあるような鮮烈が衝撃を受けました。図面を読む知識があるに越したことがありませんが、そのような基礎知識という土台を軽々と飛び越えて理解をばく進させる3Dという技術は凄まじいものがあります。
3Dデータを駆使して組立手順書を作成すれば、今まで伝えることが難しかった匠たちのカンコツも後世に残すことができるでしょう。
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3D組立手順書(組立マニュアル)に必要な情報とは?
それでは組立手順書にはいったいどんな情報が必要でしょうか?
- 組立て手順…組立てる順番を手順化した文章
- 部品名称とその数…部品の名称。部品名称の付け方は会社によって固有になる。品名、部品名、個数を表示する。(例:品名:ボルト 品番:blt002 個数:10個)
- 治工具…組立で使う治具と工具をすべて記載する。どの手順で使うかまで明確に表示する。 特殊工具を使う場合は、その名称と保管先まで記載する。
- 設備…クレーンやコンプレッサーなど。設備のある場所まで移動する場合は、その移動方法と工場のレイアウトも必要
- 消耗品…研磨剤、接着剤、ウエスなど。品番等も記載する。
- カンコツ…出来るだけ分かりやすく表現。
- 危険・警告・注意・禁止事項…作業全体にかかる事項と各手順固有の事項があるため、どちらも抜けなく記載する。
- OK・NG判定…OKの場合の完成写真とNGの場合の完成写真を表示する
- 必要工数(組立てる時間)…実際に作業して標準的な工数を記載する
- NGの対処方法…「すぐに上長に連絡する」など対処方法を記載する
ざっと列挙しただけでもこれくらいは必要です。
皆さんはこの中でどれが一番重要だと思いますか?どれも重要ですが、特に挙げるとすれば①と⑥でしょう。手順とカンコツを伝える手段として3Dは非常に有効です。
通常「手順」は文字とイラストで表現することが多いですが、ここを文字と3Dアニメーションで表現すれば、「組み付ける方向」や「接合場所」が非常に分かりやすいです。
ここに組み付ける際の「カンコツ」をうまく表現すればさらに理解度がアップします。
工具の使い方は、工具の3Dモデルがあれば、リアルに表現できますが、なければ写真を挿入しても分かりやすいです。また実写動画を挿入できる場合は、部品の支え方や工具の持ち方など非常に分かりやすく表現できると思います。
3Dアニメーションと実写動画、組立手順を作るならどっち?
組立手順を作成する際、3Dアニメーションと実写動画とどっちが分かりやすいか?
よく聞かれる質問です。答えは、ケースバイケースということになります。
3Dアニメーションが力を発揮するのは、たとえば非常に奥まった場所に部品を組み付ける際、その場所が判別しづらい場合があります。そのような時、3Dアニメーションであれば、表面を透明にして組付け場所を表示することが可能です。
実写動画が力を発揮するのは、工具を使う際や部品に手を添えるなど人間の動きの部分です。
人の動きは3Dアニメーションで表現出来なくはないですが、非常に難しいですし、データ容量が重くなります。ここは実写動画の方が分かりやすいです。
あくまで目的は、組立てる際、作業者がどの表現方法(映像、アニメーション、写真、イラスト、文字)が最も分かりやすいか?理解しやすいか?着目して表現することが重要です。
設計レビューと同時に組立手順も作成して製品市場リリースを短縮化
日本の素晴らしい技術として「すり合わせ」があります。
生産技術部門と製造部門などの他部署とのすり合わせや、同じ設計部門でメカやエレキ(電気)、ソフト等の担当技術者とのすり合わせもあります。
余談になりますが、これも20年まえ、半導体製造装置の実機レビューに参加したことがありました。メカ・エレキの設計者が滔々と装置の説明している途中で、フィールドエンジニアが「君たちの設計したこの装置のパネルの開閉が、どれだけ客先工場でメンテしにくいか分かるか!」と絶叫した姿は今も忘れることができません。
フィールドエンジニアは現場でどれほどの苦労としているのか、考えさせられました。
それはともかく、組立工程も設計部門と製造部門(もしくは生産技術部門)が最適な組立を「すり合わせ」しながら決めていきます。この時に以前であれば、2D図面を見ながらすり合わせしていたので、実際にモックを組み立ててみたら、以外なところで不具合が発生したり、干渉が見つかったりしました。
これが3DCADの導入とともに、3Dモデル上で「すり合わせ」をするため、組立時の不具合や干渉など「すり合わせ」時点で検証・改善が可能になり、後工程への負担を軽減させることができます。
設計レビュー段階で組立手順を作成し、不具合を検証・改善していけば、設計が固まった時点で組立手順書も完成しており、製造現場への組立指導も迅速に対応できます。製造ラインの本稼働もモックでの検証を待たずに垂直立ち上げ可能になります。
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