3Dマニュアルを作成するときのBOMの役割とは?

序章

ユーザー向けマニュアル作成を専門にする人にとって「BOM」という単語は聞きなれないかもしれません。もっともサービスマン向けのマニュアル作成者なら「パーツカタログ」などでピンとくるでしょう。


BOMとは”Bill Of Materials”。日本の製造業では「部品表」や「材料表」、「部品構成表」などと翻訳されます。「製品を構成する部品の一覧表」ともいえるでしょう。
このBOMを正しく運用することによって、製造業の生産効率が飛躍的にアップすると言われております。ただし「言うは易く行うは難し」でBOM専用のコンサルティングが存在するほど、奥深いものなのです。
BOMの深堀りは他ブログに譲るとして、本記事では、この奥深いBOMと3Dマニュアル作成の関係性を中心に解説していきます。

BOMとは何か?(3Dマニュアル作成者の基礎知識)

「ボム(BOM)? 知ってるよ。3DCADやXVL(ラティステクノロジー株式会社)の左側にある部品の一覧表の事でしょ?」
確かにその通りですが、もう少し深い知識があると別の見方が出来ます。
下記がBOMの種類になります。メーカーによって呼び方や役割が違う場合がありますが大枠は以下になります。

・E-BOM(Engineering BOM) 設計BOM
設計者が設計した部品や必要な購入部品、締結部品など製品を構成する全ての部品の一覧表のことです。メーカーによって異なりますが、重量や寸法、厚みなどの諸元、購入先情報や購入金額など設計に必要な重要情報を付与している場合が多いです。

・M-BOM(Manufacturing BOM) 製造BOM
E-BOMに製造情報を付与したBOMがM-BOM(製造BOM)になります。作成するのは主に製造部や生産技術部です。E-BOMが設計しやすい順番でツリー化していくのに対し、M-BOMは製造する順番でツリー化していきます。またE-BOMでは部品が単品になっており、アセンブリ化されていない場合もありますが、M-BOMは、まず一緒に組み立てる部品をアセンブリ化して一括りにし、製造する順番に並べていきます。また直接製品を構成しているわけではありませんが、製造する際に必要な副資材(グリスやウエス等)、部品を運ぶ為に必要な梱包材、設備(クレーンやチェーンブロック等)、専用治具、工具(インパクトレンチ、ドライバー等)など製造に必要なアイテムをすべて付与します。

・S-BOM(Service BOM) サービスBOM
エンドユーザーに提供するユニット(部品)単位で構成された一覧表です。作成するのは、メーカーによってさまざまですが、カスタマーサービス部門や技術サービス部門が多いようです。製品が故障した際、ユーザーにすべての部品を提供できるわけではありません。また提供する単位も部品1個1個の場合もあれば、アセンブリされたユニットで提供される場合もあります。このようなユーザーに提供するユニット(部品)単位で構成された一覧がサービスBOMになります。

・P-BOM(Purchasing BOM ) 購買BOM
設計は自社でやるが、部品製造はすべて外注化しているアセンブリメーカーに存在するBOMで、E-BOMでツリー化されている部品を、外注(製作ベンダー)の生産能力や得意な製作アイテムに合わせて再分類した、外注手配の為に使われるBOMのことです。作成は主に購買部になります。近年、自動車メーカーや半導体製造装置メーカーを中心にP-BOMが注目を集めております。
このようにさまざまなBOMがありますが、BOMがうまく運用されているメーカーでは、設計BOMから購買BOMまで一気通貫でつながっています。

「つながっている」という事が非常に重要で、近年聞かない日がないというバズワード「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が実現している」と言っても過言ではありません。「設計して、材料を仕入れて、組み立てて、売って、部品交換する」という極めて単純なメーカーの流れが「デジタルに、一気通貫につながる」ことはメーカーにとって、計り知れないベネフィットを生むことでしょう。

BOMを上手に利用しよう!(3Dマニュアル作成者の実践知識)

「なるほど、でもマニュアルと何の関係があるの?」
たしかに直接的にBOMがユーザー向けマニュアルに影響することは少ないように思えます。しかし製造者やサービスマン向けの組立(分解)手順書はどうでしょう。大いに影響することは、お分かりだと思います。ここでは分かりやすい例としてXVLで製造BOMを作ったと仮定しましょう。簡単に説明すると、ラティステクノロジー株式会社が開発したXVL Studioを使えば、構成ツリーから製造BOMがドラッグアンドドロップで簡単に作成でき、その後の工程設計も同じ要領で作成できます。下記のような手順になります。

【手順】

1.XVLで作成した製造ツリーからアセンブリ単位で工程ツリーにコピーします。

2.工程名称を付けます。

3.「作業」が部品名になってますので、作業名「ボルトを締める」などの作業名称に変更します。

4.各作業に必要な副資材、設備、治具、工具などを追加していきます。

以上で、組立(分解)工程が出来上がります。
さらに工程アニメーションにする場合は、

5.「工順・軌跡の自動作成」ボタンを押します。

6.「カメラの自動作成」ボタンを押します。

以上でアニメーションが付与されました。後はアニメーションを動かしながら、微調整したり、注意事項やカンコツを文字や写真を挿入したりして完成させます。

このようにXVLで製造BOMが整理されていれば、工程設計がスムーズにできます。


「設計変更が入ったら最初から作り直し?」そんな疑問が湧いてくると思いますが、「設計変更の抽出・反映」機能を使えば製造BOMや工程アニメーションに自動で反映できます。
それもこれもあくまで「BOMが整理されている事」が条件になります。
なぜ「BOMの整理」を繰り返しお伝えしているかと言えば、BOMが整理されているメーカーがあまり多くないからです。「3DCADの構成ツリーは(正)じゃないよ。こっちの紙の部品表(材料表)が(正)だよ」ということが少なくありません。3DCADデータに締結部品が全く上がっていないことや、構成ツリーに試作部品がたくさん上がっていて、どれが正式ですか?と聞くことも多くあります。BOMを整理することは後工程業務をスムーズにして、ひいては製品の競争力強化にもつながっていきます。

3DマニュアルはBOMでさらに便利になる

では、3DマニュアルとBOMを連携させることでどんな効果が得られるでしょうか?
まず3Dモデルからも部品一覧(BOM)からも部品の特定が可能になります。3Dモデルで知りたい部品をクリックすれば部品一覧(BOM)がハイライトされます。また逆に部品一覧(BOM)の中で部品の場所が知りたい場合は、一覧をクリックすれば3Dモデルがハイライトされます。このように3Dマニュアルの相互連携機能を使えば、部品特定が簡単にできます。
また部品に紐づいている情報も一緒に部品一覧(BOM)に表示させれば、様々な用途で使えます。
部品一覧(BOM)と部品発注システム、部品在庫システムと連携させれば、在庫の確認や発注が簡単にできますので、顧客満足度が向上します。もし現在BOMの活用に課題があり、どうしてよいか迷っておられましたら、ぜひ弊社にお声がけください。

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