序章
当社で制作している取扱説明書は、主に製品マニュアルが中心です。最近では、「取扱説明書の電子化」について、多くのお問い合わせを頂戴します。SDGsを耳にする昨今、世の中のペーパレス化が進み、働き方改革やBCP対策で企業側も様々な情報の電子化に取り組まれていると思います。
しかし、取扱説明書(マニュアル)の電子化をご検討されている企業様も、既に電子化に取組まれている企業様も、取扱説明書を電子化するメリットはユーザの閲覧だけではないと考えます。
「いまが電子化の好機!」という理由を、マニュアル制作会社の視点で解説いたします。
■なぜ、紙マニュアルから電子マニュアルへ移行できないのか
取扱説明書を電子化したくてもできない理由を、お客様にお話いただく機会があります。
- 設計担当者が空いている時間を使い、wordで制作したものでよい
- 電子化するためのスキル、予算、時間、掲載するWebサイトが用意できない
- 製品と違い、取扱説明書(マニュアル)の改善や見直す機会がない
取扱説明書(マニュアル)の扱いが、とても低いことが想像できます。
もちろん、電子化の検討以前に、取扱説明書の印刷物が必要なケースもあります。
- 製品に同梱する必要があり、物理的に紙マニュアルとして制作しなければならない
- お客様からのご要望で、完全電子化は難しい
- 安全に関する情報は、紙媒体で使用者に届ける義務がある
仕方がないこともありますが、電子化ができないわけではありません。紙マニュアルを制作したうえで、電子マニュアルも制作できます。
取扱説明書の電子化は、閲覧だけでなく、配布、長期保存、販促資料という観点からもアプローチはできると考えます。
■取扱説明書の電子化とは?
「取扱説明書の電子化」とはどういったイメージをお持ちですか?ここで述べる「取扱説明書」とは、おもに製品マニュアルを想定します。
また、PC環境でWordやInDesignといった組版ができるアプリケーションソフトで制作し、印刷した冊子の状態で納品されるマニュアルのことです。
例えば、「操作マニュアル」、「保守点検マニュアル」、「据付マニュアル」、「故障診断マニュアル」などを「取扱説明書」として説明します。
PC環境で制作するため、印刷するための電子データは電子マニュアルの原稿となりますが、電子マニュアルではありません。では、「取扱説明書の電子化」とはどういったものでしょうか?
- 取扱説明書の電子化とは、紙マニュアルをスキャンして取り込んだPDF形式データ
- 取扱説明書の電子化とは、紙マニュアルの印刷用トンボを取り除き、閲覧・保存に適したPDF形式のデータ
- 取扱説明書の電子化とは、紙マニュアルの原稿やコンテンツを、Webブラウザで閲覧できるようHTMLやEPUBのデータへ変換した電子データ一式
- 取扱説明書の電子化とは、紙マニュアルとは別の制作工程、または、別のコンテンツを用意し、Webブラウザの閲覧適用した電子データ一式
イメージや理解はそれぞれ異なったとしても、どれも正解だと思います。
業種や取扱説明書の閲覧や保管などの目的、用途、規模、制作工程においてもデータのカタチは異なります。PCやタブレット、スマホ、VR機器といった電子デバイスで閲覧出来る電子マニュアルを制作することを、「取扱説明書の電子化」とします。
取扱説明書は電子化することにより、どのように利用し、閲覧し、共有し、保管し、備えられるのか、更に広範囲で活用できるデータに化けるのです。
■取扱説明書を電子化するメリットとデメリット
電子化が進まない理由に、取扱説明書の紙のメリットをあげられるケースもあります。
- 紙で見る方が目次もレイアウトも慣れていて扱いやすくわかりやすい
- インターネットが使えなくても、手元にあればすぐにどこででも閲覧できる
- 複数の資料を広げて、過去や他の取扱説明書と簡単に見比べることができる
取扱説明書の利用環境による利便性をよく理解し、相応しい利用方法で使用されていると思います。マニュアル制作会社にとってもうれしい言葉です。
反対に、取扱説明書の電子化のデメリットをあげられるケースもあります。
- 電子化して閲覧できるデバイスやインターネット環境が十分に用意できない
- 電子化することで新たなシステム導入で覚えることが多く、仕事が増えてしまう
- 現場は汚れるため、精密機器(電子デバイス)が使えない
- 現場で共有したい注意事項や手順が、取扱説明書へ書き込めない
- 個人で使っていた時に気にしていなかったが、複数人で使う場合の想定が難しい
「ごもっとも」なご意見を多くお聞かせいただいています。
こういった難題を頂戴するとマニュアル制作会社としては、「どうやったら・・・」と一緒になって悩み課題解決することができます!
取扱説明書の電子化について、紙マニュアルと電子マニュアルの違いを改めて認識し、閲覧が面倒でない環境を整えるなどの工夫を施し、より簡単に、より便利で、より効果の期待できる取扱説明書を制作できるよう励みたいです。
■取扱説明書は、「いまが電子化の好機!」である理由
先の通り、取扱説明書のタイプによっては、電子マニュアルでの閲覧が難しいケースがあります。
しかし「取扱説明書の電子化」は、その目的である “利用者の閲覧” だけではなく、いつでもどこでも誰でもが、取扱説明書を閲覧できれば(※1)、利用するユーザ以外への効果もあると考えます。(※1 一部場合によって閲覧をクローズすることも必要)
- 場所:持ち運びや配布が容易、国境越えて閲覧可能、保管スペースの確保
- 時間:更新が容易、アーカイブ・長期保管可能
- 共有:製造元による製品への課題還元、利用者のフィードバック、購入検討者への販促支援など)
これまで購入しなければ手元になかった紙の取扱説明書が、それ以上の価値を生む可能性が出てきませんか?そこで「いまが電子化の好機!」である理由をご紹介します。
- セキュリティ面から懸念されていた製造業のクラウド利用が、在宅ワークをきっかけに、利便性と安全性からも求められるよう、取扱説明書を取り巻く環境も変わってきた。
- インターネットの普及、高速化、大容量のオンラインストレージなど、中小企業や先進国までインフラが整ってきた。
- 電子デバイスも安価になり、入手しやすいユーザ環境が増えてきた。
- SDGsなど環境問題でペーパレス化と働き方改革を政府が推進している。
- 災害などが多く、BCP対策としても電子化を求める企業が増えてきている。
コロナ禍の在宅、地震などの災害、環境課題への取組み、働き方改革など、業務に対する思考も急激に変化している状況と考えます。こういった「後押し!」がポイントとなりませんか。
■まとめ
在宅ワークによる外出・移動の制限が設けられ、オンラインで業務が進む世界に、「ガラッ」と変わった今だからこそ、新しい取組みとして「取扱説明書の電子化」は、いろいろな世の中の状況の後押しをもらい、トライできる良い機会、好機ではないでしょうか?
既に「電子化」に取り組まれている企業様も良い機会です。「閲覧」以外にも利用価値のあるマニュアルを見直されてはいかがでしょうか?
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