マニュアルを作成する手順 注目すべきポイントとは

序章

製品には必ずといっていいほどマニュアルが付属されています。ほとんど読まれることがないにも関わらず、マニュアルはなぜ付属されているのでしょうか。また、ほとんど読まれないマニュアルはなぜ作成されているのでしょうか。

本記事では、まだまだ「製品のおまけ」として扱われやすいマニュアルを作成する目的、そしてマニュアルを作成する手順における注目すべきポイントを解説します。

なぜ製品にはマニュアルが付属されているの?

考える人
悩んでいる人

製品マニュアルは基本的にエンドユーザーが読むものです。しかしながら、そのエンドユーザーの約7割はマニュアルを読まずに製品を使い始めると言われています。

操作性の向上により、マニュアルを読まなくても感覚で操作できる製品が多くなっていることにも一因はありますが、「マニュアルは必要な時にだけ読むもの」という認識のエンドユーザーが大半だからです。

また最近では、「必要な時にWebサイトでマニュアルを見るだけ」というエンドユーザーも増えてきました。

このようにほとんど読まれないマニュアルなのに、なぜ製品に付属されているのでしょうか。 それは、「困ったときだけに読む」だけがマニュアルの役割ではないからです。マニュアルには作成する目的があり、その必要性から製品の一部として付属されているのです。

マニュアルを作成する目的とは

昨今の製品は多機能になり、基本的な使い方だけではなく、便利に使うためにはどうするのか、より性能を向上させるにはどんな注意が必要なのかなど、多くの情報がマニュアルには記載されています。

そこには製品を最高のパフォーマンスで使ってもらいたいという点と、エンドユーザーに安全に使ってもらいたいという点があるからです。ここで重要なのが「製品を安全に使ってもらう」ということです。

ご存知のとおり、日本でも1995年7月に「製造物責任法(PL法)」が施行されました。これにより、製品の欠陥によって生命、身体または財産を侵害したとき、製造者などはその損害を賠償しなければなりません。それは製品の使用中に万が一事故が起こった場合、製品を製造した側は、使用者によって訴訟を起こされる可能性があるということなのです。

では、ここでいう製品の欠陥とは何でしょうか。次の3つがあげられます。

製品の欠陥

設計上の欠陥
 製品の設計に関する問題です。

製造上の欠陥
 製品の製造過程での問題です。

指示・警告状の欠陥
 使用指示や警告に関する問題です。

「指示・警告上の欠陥」ですが、マニュアル(取扱説明書)や警告ラベルなどの不備になります。

これは、「マニュアル上で伝えるべき情報が正しく伝えられていない」=「製品の欠陥」であることを意味しています。言い換えれば、マニュアルは「伝えるべき情報を正しく記載する」役割があるということなのです。

つまり、マニュアルを作成する目的は2つ。1つは「使用者の安全を守り、正しく使用してもらうこと」、もう1つは「製品による事故を防ぎ、製造者のリスクを回避すること」にあるのです。

PL法については、議論の的になるため理解されている方も多いと思います。PL法を読んだことがないという方は、日本のPL法はわずか6箇条しかないので一度読んでみるのもいいかもしれません。

(消費者庁ホームページ「製造物責任法」:
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/

マニュアルを作成する手順 注目すべきポイントとは

マニュアルを作成する目的がわかったところで、実際どのようにマニュアルを作成したらいいのでしょうか。

マニュアルを作成する手順としては、次の4つがあげられます。

マニュアル作成プロセス

1.情報を整理する
製品仕様に合わせて関連データを収集する

2.構成を決定する
マニュアルの構造と内容を決める

3.トラブルシューティングをまとめる
よくある質問とその解決策を概説(解説)する。

4.警告と注意事項を準備する
PL法に基づいて警告と注意事項を集める

多くの場合、マニュアルを作成する手順はこの4つを基本とします。いったいどこに注目すべきポイントがあるのでしょうか。

それは「どの情報をどのタイミングでユーザーに提供するか」にあります。

PL法を理解し、マニュアル作成の手順のしたがって、ユーザーに「正しく」「安全に」製品を使ってもらうための情報を記載する。マニュアル作成を手掛ける多くの方がこのポイントに気をつけながら作業をされていることと思われます。

しかし、多くの場合「正しく記載されていない」という点になかなか気づくことができません。それが適切なタイミングでユーザーに情報が提供できていないという結果になっているのです。

よくある相談に、「不備のないマニュアルが作成できたと思っていたのに、ユーザーから『マニュアルに記載がなかった』とクレームを言われた。」というものがあります。単なるユーザーの見落としならいいのですが、そもそも見落としやすいという時点で不備があるともいえるのです。

これこそが、「適切なタイミング」=「ユーザーが見るタイミング」に情報が提供できていなかったという不備になるのです。

では、われわれは「適切なタイミング」をどのように意識しているのでしょうか。

それは「製品寿命(製品ライフサイクル)」にあります。

製品には、販売されてから廃棄されるまでという製品ライフサイクルがあります。

製品ライフサイクルのフェーズ

輸送
 製品を安全に移動させるフェーズです。

開梱
 製品を包装から取り出すプロセスです。

設置
 製品を意図した場所で使用するために設定します。

調整
 最適なパフォーマンスのために製品設定を変更します。

操作
 ユーザーによる製品の実際の使用です。

点検
 機能性と安全性のために製品をチェックします。

保守
 製品の定期的なケアとサービスです。

保管
 使用していないときに製品を適切に保管します。

廃棄
 製品の寿命が終わったときの正しい廃棄方法です。

マニュアルでは、そのライフサイクルのすべてにおいて「正しい扱い方」と「禁止される扱い方」を記載する必要があります。ライフサイクルには「輸送」、「開梱」、「設置」、「調整」、「操作」、「点検」、「保守」、「保管」、「廃棄」などがあります。

われわれは、製品ライフサイクルの各フェーズにおいて、「どの情報をどのタイミングでユーザーに提供するか」を考慮しながらマニュアルを作成しているのです。この意識がマニュアルを作成する手順において、注目すべきポイントとなります。

まとめ

今回はマニュアル作成の目的とマニュアルを作成する手順、そして注目すべきポイントについて解説しました。マニュアルの必要性や重要性が理解いただけたとしても、自社での作成が難しいと思われた方もいることでしょう。その際はマニュアル作成の専門会社に委託することも検討してみてください。

マニュアルを作成するにあたっては、PL法の他にも様々な規格に応じることが求められています。IEC82097-1では「使用説明の専門家がマニュアルを作らないといけない」ことまでが規定されています。

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