マニュアル作成手法の違いを業種別に学ぼう

序章

マニュアル作成の考え方や方針は、対象読者、マニュアル体系、仕向地(輸出先国・地域)、作成ページ数など、業種ごとに違いがあります。業種別のマニュアル作成手法の違いを学び、近年進むデジタル化への対応方法など、マニュアル作成の進むべき方向性を本記事で解説します。

マニュアル作成の業種別課題①(自動車メーカー編)

自動車メーカーでは、購入者向けのオーナーズマニュアルや販売ディーラ向けの整備マニュアルなどを作成しています。整備マニュアルの場合、各車種のモデルチェンジのタイミングに合わせてマニュアルを作成する場合と、モデルイヤー版として毎年最新情報を反映してマニュアルを作成する場合に大別されます。モデルチェンジのタイミングは、車種構成やメーカーの商品投入計画によって異なりますが、フルモデルチェンジの場合で4年から6年、マイナーチェンジの場合で2年から3年が標準的です。フルモデルチェンジの場合、マニュアルにはすべての情報を記載しますが、マイナーチェンジの場合、前機種から変更や追加になった情報のみを記載する追補版形式として作成される場合もあります。整備マニュアルでは、追補版形式として作成する場合を除き、一つの車種で2,000ページ以上の情報を記載することが一般的です。大量のページ数を定められた期間内で作成するマンパワー(自動車に精通した原稿作成者)の確保と効率的なシステム運用が各メーカーとも共通の課題となっており、急速に進むマニュアルのデジタル化への対応も含め、外部のマニュアル作成会社の協力が不可欠となっています。現在の自動車は、コンピュータ化が進み、自動衝突防止装備などの拡充により、普通乗用車では50個以上の半導体が搭載された製品に変貌しており、これに伴い整備マニュアルでは故障診断系の情報の記載が大幅に増える傾向にあります。従来のメカニック知識主体の整備から、電気・電子系の知識を必要とする整備へと変わる中、適切かつ有用な情報を記載することが整備マニュアルに求められています。高度な専門知識を持った原稿作成者の確保と育成が各メーカーの新たな課題となっています。

マニュアル作成の業種別課題➁(機械メーカー編)

工作機械や射出成型機などに代表される産業用機械メーカーでは、機械のサイズ、用途、性能などに応じて主力機種を開発し、仕向地や顧客仕様ごとにさらにその派生機種を開発しています。モデルチェンジのタイミングは、自動車に比べて長いのが特徴です。機械の納入先が主に工場向けとなるため、機械に付属するマニュアルは、機械のオペレーター向けの操作マニュアルと機械の定期点検や保守を行う作業者向けの保守点検マニュアルの2種類が代表的です。大手メーカーでは、社内に専門部署を設けて内部でマニュアル作成している場合や、日本語の原文原稿作成から多言語ローカライズ(海外法規対応を含む)までのマニュアル作成1式をマニュアル作成専門会社へアウトソーシングしている場合が一般的です。一方で中小メーカーでは、それぞれの機械を担当する設計エンジニアが、設計工程の後工程としてマニュアル作成を兼務している場合がほとんどで、機械自体の開発の遅れや納品後の突発的なトラブルの対応などで日々時間に忙殺されている中、マニュアル作成に十分な時間を取れない現実を抱えています。また、設計エンジニアが作成するマニュアルは、読み手にとって分かりにくい技術的な文章の記載になりがちで、読みやすさの向上が課題となっています。このため多忙な設計エンジニアの負荷の軽減とマニュアル品質の向上を目的にマニュアル作成会社へ依頼する中小メーカーも増える傾向にあります。量産型が少なく、少量多品種型(個別受注生産)が多い機械メーカーにとっては、設計段階において少量多品種型に適した設計のモジュール化が進んでおり、部品の共通化と蓄積した設計情報の流用化によりプロセス全体の効率化を図っています。マニュアル作成においても設計のモジュール化の概念を取り入れることが、作成の効率化につながると考えることができます。マニュアルに記載する情報を適切な粒度に部品化し、同一機種のマニュアル内と他機種とのマニュアル間で流用度を高めることにより、記載情報の統一化と標準化を図ることが可能になります。マニュアル作成のモジュール化については、専門的な知識が必要となるため、マニュアル作成専門会社の適切なアドバイスを受けることが重要になります。また設計段階で作成した3DCADデータをマニュアルに活用することも、マニュアル作成の効率化とデジタル化への対応の上で有効な方法となります。

マニュアル作成の業種別課題③(精密機器メーカー編)

OA機器や医療機器などに代表される精密機器メーカーでは、機械メーカーと同様に、製品の用途、性能などに応じて主力機種を開発し、仕向地や顧客仕様ごとにさらにその派生機種を開発しています。モデルチェンジのタイミングは、他業種に比べて短いのが特徴です。病院で使用する専門的な機器を除き、オフィスや一般家庭でも使用することも多い機器となるため、ユーザーフレンドリーを意識した記事構成、レイアウト、文章などが求められます。製品の海外市場への出荷も多く、日本語の原文原稿作成から多言語ローカライズ(海外法規対応を含む)までのマニュアル作成一式をマニュアル作成専門会社へアウトソーシングしているメーカーが多いのも特徴です。また精密機器メーカーでは、設計段階において新機能の追加などソフトウェア部分の使用変更の頻度が比較的高い製品が多く、各製品の市場の動向を見ながら生産直前までその変更が続く場合が多いのも特徴です。マニュアル作成においては、この仕様変更に合わせて行う記載内容の変更を限られた期間内で対応していくことが大きな課題になります。また読者の理解度を高めるため、動画(ビデオ映像)やCGを取り入れた電子マニュアル作りに取り組むメーカーも近年増えています。

マニュアル作成の進むべき方向性 まとめ

これまで見てきたように、マニュアルの作成方法における課題とその解決アプローチには、どの業種においても共通なものと、各業種によって異なるものが存在することが理解できます。マニュアル作成においては、モノ作りの考え方に立つと、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の3つの要素が重要であることはもちろんですが、読者という対象がさらに加わることから、伝える情報のわかりやすさや検索性も重要な要素となります。また、デジタル化がさまざまな分野で進む中、マニュアルも紙の時代からスマートデバイスで閲覧する時代に入り、ICTとコンテンツを融合させたデジタル型のマニュアルへ移行が進んでいます。マニュアルのデジタル化にも対応した全体最適型のマニュアル作成の手法と技術が今求められています。

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