第2弾!業務のトリセツ(業務マニュアル)作りを命じられてしまったあなたにアドバイスします!

序章

あなたは最近、今の会社に中途採用で入社しました。しかし、業務は複雑にしてタスクは部分的にしか与えられず、なかなか全体像が理解できません。
業務マニュアルでもあればいいのに! 業務のトリセツはないのか!
仕事が憶えられない自分へのいらだちもあり、あなたが先輩に詰め寄ったところ…

「マニュアルは、ないな。ちょうどいい。仕事憶えながら、業務トリセツを作ってよ」。

事態は少しも好転しないどころか、新たなタスクまで増えてしまったのです。

新規でマニュアル作りが必要となったとき、マニュアル作成に特化した私たちのような専門会社にご依頼いただくのはひとつの方法です。
しかし、期間や費用やその他さまざまな条件によって、自社でのマニュアル作成を選択される企業も少なくありません。

ここでは、そのような会社で業務マニュアル作成を命じられた立場の方に、マニュアル作成の専門家である私たちがどこまで寄り添い、親身なアドバイスが可能か、実験的・挑戦的な試みで連載してみようと思います。

前回の振り返り

前回では、業務マニュアルの作成にあたり何から手をつけていいかわからない人のための、3つのポイントを紹介しました。

  • ポイント1:作成するマニュアルの仕様
  • ポイント2:作成するマニュアルに盛り込む内容
  • ポイント3:マニュアル作成のスケジュール

これによって、何を使いどんな風に作るか、業務のどこからどこまでを盛り込むのか、そして、いつまでに作るのかを大まかに決めたわけですね。
今回は、トリセツの作成部分にもう一歩踏み込んでみましょう。

トリセツ作りに大切なことは情報の整理

役に立つトリセツを作るには、コンテンツ情報が整理されていることと、読者の理解順に沿った情報提供の流れが構築されていることが必要です。

わかりやすい文章や読みやすい文章の技術、洗練されたイラストレーションなどは、よいトリセツ作りの助けになりますが、あくまでも本質の「二の次」の技術です。
読み手が、求める情報にすばやく到達できて、すんなり飲み込める。そういう環境がお膳立てできていることが、まずは肝心なのです。

これが徹底されていないと;

  • 知りたいことが見つからないトリセツ
  • 応用が利かず毎回参照しなければならないトリセツ
  • 全機能の中のどの辺りを、何のためにやろうとしているのか不明なトリセツ

などとなりがちです。


マニュアルの設計とは

では、そのような理解しやすい環境をお膳立てするには、どうすればよいでしょうか。
それには、まずトリセツ全体の概念作り=マニュアルの設計が重要です。
マニュアルの設計とは、盛り込まれる情報の分類と言ってもいいでしょう。

業務マニュアルを作成する場合、当面いちばん苦労しているこの業務処理のやり方から書き始めたい!自分が理解できている今のうちに!ということもあるかもしれません。

書き出しの勢いをつける意味で、それもよいでしょう。
しかし、そのトピックが、根幹の事柄の説明をしているのか、それとも枝葉末節だけど重要なことを言おうとしているのかなど、自分の中で位置づけを意識しなければいけません。

最初から業務の全体像が把握できているのであれば、大きいもの(主幹)から小さいもの(末節)へ、そして必要となる時系列順に、情報を並べていけばいいのですが、OJT(学習しながらの業務遂行)と併行してマニュアル化する場合、必ずしも業務全体がわかっているとは限りません。
これは大事なことだ!これこそが業務のキモだ!と思った作業が、意外と特殊で滅多に行われない、応用の利かない末端のルーチンだったりします。

そのため、書き始めたトピックについて、次の方法で早いうちに位置づけを確認して、業務の頭を押さえておく必要があるのです。

その方法とは;

  • 該当するトピックの上流を確認する。この材料(書類・データなど)は誰がいつ、どうやって作るのか。その目的は?
  • 同じく下流も確認する。自分が行う処理は、その後誰のところへ行くのか。どんな風に業務に影響を及ぼすのか。自分が処理を間違えると、どういうことになるのか。

について確認した上で作業することです。
そして忘れてはいけないのが、その中で新たに知ったことや気づきなどを、記録することです。

マニュアルの設計の実際

そのような意識をしつつ業務を行い、またその手順を記録していると、やがて業務の全体像に近いものが現れてきます。それは日々の書きなぐったメモの集積かもしれませんし、頭の中にだけある立体的な配線図のようなものかもしれません。

そうやって生まれた概念を、適当なタイミングで整理しましょう。メモやノートのような雑多な媒体から、マニュアル作成に役立つ定型的な媒体に変換し、整理していきます。

具体的には、次のことを行います。

  1. 全体図の要所々々で、同一の分類としてまとめられる塊を決め、名前を付ける。
    この時点で「いい名前」「上手な名前」「統一された名前」を付けなくてもOK。
    例えば「発注書と請求書を付け合わせ確認」「受講者予約票まとめ」など、自分がわかる名前を付ける。
  2. 付けた名前を、付せんに書き出す。
  3. 書き出した付せんを、整理して並べてみる
この手順の「3」で行う作業が、具体的な「マニュアルの設計」ということになります。


この作業では、業務の塊(単位)どうしの前後関係や「含む/含まれる」関係などを考えながら、その関係が見えるように、付せんの位置を決めていきます。


大まかでいいので、トピックの「大・中・小」(文書でいう「章・節・項」)を意識し、バランスよく配置していきましょう。

前項で説明したのは上流と下流の確認だけでしたが、付せんを並べながら理解が進むうちに、併行して処理する物が別にあることや、それらに順序が決まっていることなどが新たにわかってくるかもしれません。
重複や不足が見つかるかもしれません。

とりあえず命名した作業の名前を、もう少し正確なものに変えたくなるかもしれません。また、憶えたときは別々の業務だと思っていたものが、ひと続きの流れであることがわかったりします。

付せんの位置を動かしたり、付せんを増やしたり、名前を変えたりして、マニュアルにしたい業務の全体像をできるだけ具現化した構成にまとめていきます。

ここでは付せんへの書き出しで作業を説明しましたが、得意な思考ツールがあればそれを使っていただいて構いません。情報の整理には、マッピング、アウトライン、ツリー、他にもさまざまな方法があり、多くは手描きでもアプリでも行えます。

これが初歩的な「マニュアル設計」のやり方です。納得いくまで、時間をかけて行いましょう。
ここまでは、マニュアル作成作業の準備となる「構成」に当たる作業なのですが、じつはすでに作成作業に入っていることにもなります。それは、こうやって練りに練った構成は、そのまま「目次」として利用できるからです。逆にいえば、ほとんど手直ししなくても目次にできるぐらいまで、情報の分類整理をこの段階でし尽くすことが大事です。

これで、マニュアルの構成(目次構成)が決まりました。
あなたの「業務マニュアル作成プロジェクト」は、コンテンツを書き出す準備までできたことになります。

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